当院で行っている治療 当院で行っている治療

1.不妊症 当クリニックは「一般不妊治療施設基準」の認定を受けています。

〈女性側の原因の検査〉

①子宮奇形や腫瘍関連:子宮奇形の有無、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、卵巣腫瘍(特にチョコレート嚢胞)は超音波検査で診断しています。確定診断が困難な場合は連携施設でのMRIを依頼しています。なお子宮内膜ポリープはソノヒステログラフィ-(SHG:子宮腔内に生理食塩水を注入して超音波検査を行う方法)でも診断しています。

②子宮内膜:排卵期の内膜の厚さ、および形状を超音波検査で確認しています。内膜の薄い傾向の方は黄体期にも検査をしています。

③排卵障害:超音波検査にて卵巣の形状(特に多嚢胞性卵巣(PCO))の検査をしています。また、ホルモン検査にて視床下部-下垂体、甲状腺、卵巣の異常の有無の検査を行い、また基礎体温(BBT)をつけていただいています。BBTは「原始的方法」ですが、今もってかなりの有用性が認められていますので、毎日大変ですが出来るだけ測定記録していただいています。

         

④卵管因子:当クリニックでは通気検査(ルビンテスト)を行っています。カテーテル法で行っていますので痛みはほとんどない~軽度です。少しでも問題のある方は子宮卵管造影(HSG)を連携施設で施行していただいてます。尚、不妊関連の感染症(クラミジア・淋菌)の検査も行います。

〈男性側の原因検査〉

精液検査は顕微鏡での通常の検査とアナライザー機器による検査の2通りの検査を同時にしています。なお精液の検査値の変動は非常に大きいので場合によっては2回以上の検査を必要とします。

〈精子と子宮頸管粘液との適合検査〉

性交後検査(PCT ヒューナーテスト)を行います。子宮頸管粘液量や牽糸性などが充分良好になった段階で性交をもっていただき粘液を採取し、粘液内の精子数や運動性を調べる検査です。性交後4~12時間後の検査が理想ですが、24時間以内なら一定の評価が可能です。結果が良くなかった場合は抗精子抗体の検査を行うと共に人工授精(AIH(IUI))を一定の回数でお勧めしています。結果が良かった場合でも、タイミング法でなかなか妊娠が成立しない時はAIH(IUI)をお勧めしています。

〈人工受精の方法〉

当クリニックでは現在、連続密度勾配法で子宮内に注入する精子の調整をしています。AIH(IUI)はタイミングがずれると妊娠成立が期待し難いので、タイミングについては特に留意しています。精子調整等の時間を含め約1時間半程度の時間を要します。原則午前中の実施となりますが、土曜日も可能です。

2.低用量ピル

女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモンの合剤をピルと呼んでいます。ホルモンの量によって中用量と低用量(超低用量を含む)に分かれ、使用の目的によって避妊用(自費)と治療用(保険)があります。基本的な効果は同じですが、避妊効果は自費の避妊用のピルの方が高いと報告されています。ピルに含まれるホルモンの作用で排卵が起こることが難しくなり、排卵直前に増加する子宮頸管粘液を増加させず精子の侵入を妨げ、さらに子宮内膜が受精卵の着床し難いように変化し妊娠しなくなります。ピルによりホルモンの変動が少なくなり、心身の状態が安定しやすくなります。月経量は非常に減少し(場合によっては出血しなくなります)、月経痛も軽くなる事が多いです。子宮内膜症の病変を抑制する効果があるため、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)や子宮腺筋症は縮小することが期待されます。もともとは健康な女性に避妊のために長期間服用してもらうための薬として開発されたもので、安全性には非常に配慮されています。重大な副作用は血栓症ですが頻度は非常に低く、妊婦さんよりも統計上のリスクは低いです。血栓症は飲み始めの時期ほどリスクは高く、服用を続けていくとリスクは低下します(蓄積するリスクではないということです)。ただし、一旦中断するとリスクはリセットされてしまいます。血栓症のリスクがもともと高い方(喫煙者、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、40歳以上など)の場合は勧められません。治療用の超低用量ピルでは乳がんは増加しませんが、避妊用の低用量ピルでは乳がんが増加しないという報告と極わずかに増加するという報告があります。いずれのピルでも卵巣がん、子宮体がんおよび大腸がんは減少しますので、がん全体としてはリスクが低下します。乳がんの既往のある方は服用できません。長期間服用しても中止すれば卵巣の働きは元に戻り、妊娠しにくくなることはありません。

3.ジエノゲスト

黄体ホルモンの薬です。子宮内膜症の病変を直接抑制する作用と、卵巣の働きを少し抑制して卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を低下させる作用の両方で子宮内膜症や子宮腺筋症の病巣の縮小が期待されます。月経は起こらなくなるので月経痛を避けられますし、月経以外の骨盤痛、性交痛や排便痛も軽くなることが多いですが、不正出血を繰り返す事もあるのが欠点です。エストロゲンがある程度低下しますが、骨粗鬆症はほとんど起こらないとされていて更年期症状もほとんど出ません。

4.ホルモン補充療法
(HRT・ERT)

閉経前後に卵巣機能が低下してくる為に起こるいわゆる更年期症状に対して、卵胞ホルモン(エストロゲン)を補充して更年期症状の改善を図ります。エストロゲンにはそれ以外に、骨、皮膚、粘膜、歯周囲等々に対する老化防止(アンチエイジング)作用があります。子宮全摘術後の子宮のない方はエストロゲン単独で、子宮のある方は子宮内膜がん発生予防の為エストロゲン以外に黄体ホルモンの併用が必要です。併用療法(以下HRTと記します)で、大腸がん、胃がん、食道がんリスクの低下の可能性が示されています。

乳がんリスクについては5年以内のHRTでは全くリスクの上昇はなく、それ以降の使用でも併用黄体ホルモンをリスクの極めて少ない種類を選択することで乳がんはほとんど増加しません。
エストロゲンは経口剤(錠剤)以外に皮膚から吸収させるパッチやゲルもありますが、経皮剤の方が肝臓への負担や血栓症のリスクがわずかに少ないとの報告もあります。 ホルモン関連の可能性のある悪性腫瘍の既往のある方のHRTは以下の如くです。乳がんは原則不可。子宮体がんは内膜間質肉腫以外は可。卵巣がんは顆粒膜細胞腫やセルトリ・ライデッヒ細胞腫については見解が定まっていませんが、その他の卵巣がんは可です。子宮頸がんの扁平上皮癌については再発リスクは上昇せず、腺がんについてもリスクの上昇の報告はないとされています。但し、血栓症リスク等を考慮し、60歳以上、肥満、高脂血症、無治療の糖尿病や高血圧の方などは慎重に対応する必要があります。詳細は受診された際にご相談ください。

5.緊急避妊薬

     

心配なときは迷わずに!2種類の薬があります。
①費用は高め(説明・指導料以外の薬代約7000円)だが効果の高いレボノルゲストレル錠(72時間以内に1回服用で約98%の妊娠阻止率)
②レボノルゲストレル錠発売以前に主におこなわれていた費用は安い(説明・指導料以外の薬代約3500円)が効果のやや劣るヤツペ法(72時間以内に服用を開始して12時間後に2回目の服用する必要があります。吐き気のすることも多く、吐いてしまうこともあります)があります。詳細は受診された際にご相談ください。

6.人工妊娠中絶術

子宮に優しい手動真空吸引法(MVA)を基本にしています。但し、可能な週数に限界があります。麻酔は意識がずっとあるブロック麻酔(痛みはわずかですが感じます)、完全に眠ってしまうことによって痛みを感じない静脈麻酔のどちらかを選んでいただいています。費用は税込み99,000円より(妊娠週数、麻酔方法、難易度等によって異なります)。妊娠12週以降の妊娠中絶は取り扱っていません。なお、当院院長は人工妊娠中絶術の麻酔に関して、産婦人科専門誌(臨床婦人科産科、産婦人科治療、周産期医学)に既に計6扁の依頼論文を執筆しています。

7.月経の移動

旅行や受験、結婚式など大事なイベントに月経が重ならないようにしたいことがあると思います。月経を早める方法と遅らせる方法とがあります。月経を早める場合は、月経開始3~7日目に中用量OC(プラノバール)を10~14日以上服用する必要がありますので早めに受診してください(特に月経不順の方)。2か月ほど前の月経中に受診して頂ければいろいろと調整ができます。月経を遅らせる場合は月経の始まりそうな最も早い予定日の5~7日前から薬を内服します。薬による消退出血(月経)の場合、月経量が多くなったり少なくなったりする可能性があります。薬を服用している間は血栓症(エコノミー症候群等)のリスクが高くなりますので、旅行中に服用するよりも前もって服用して月経を早めておく方が安全です。薬の費用は自費で、金額は使用する薬の錠数によって変わりますがそれほど高価ではありません。

8.外陰部良性腫瘍・膿瘍等

当クリニックでは局所麻酔又は静脈麻酔下でできる小手術を行っています。

9.子宮内避妊用具(IUD)

避妊目的のリング(IUD)はFD-1,ノバT(銅付加IUD)の2種類を用意しており、最大5年間装着可能です。IUD装着中の妊娠率は5年間で数パーセントあることや自然脱落(2~10%)やズレがあることがわかっており、「完全な避妊」は出来ません。感染症リスク(0.5%以下)や挿入時の穿孔リスク(0.2%)もあります。また月経日数が延長する方も居られます。適合の良い方は最大5年間装着出来るので通常何もする必要がなく結果的には安価です。但し、位置確認の為に1年目は3~4回程度、2年目以降は1年に1回は受診してください。なお「未経産婦には第1選択の避妊法としないこと」となっています。妊娠希望に変わった場合は抜去後短期間で妊娠を目指していただけます。

       

10.ミレーナ®

過多月経に対する保険適応IUD(レボノルゲストレル放出子宮内システム)です。徐々に稀発月経となり、約20%の方が無月経となります。管理や合併症などは前記IUDと同じです。なお黄体ホルモン作用があり、子宮内膜がんのリスクは減少します。

       

11.漢方療法

自律神経失調症、更年期症候群、軽症の月経不順や月経困難症、不眠症、精神不安、月経前症候群(PMDs:PMS・PMDD) 尋常性痤瘡(ニキビ)、冷え性、肩こり、アレルギー性鼻炎等々いろいろな症状に対応して漢方薬の処方を行っています。近畿大学東洋医学研究所所長 女性医学教授の武田卓医師が毎週水曜日に当クリニックの外来診療を担当し、その指導下での漢方療法です。

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